FIGARO japonにて『冬の小鳥』映画評。

スクリーンショット(2010-09-21 19.39.45).png現在発売中のフィガロ・ジャポン(ニューヨーク最新案内の号)のカルチャーページで10/9から岩波ホールで公開の『冬の小鳥』という映画のレビューを書きました。

初めての映画評の仕事です。
緊張しながらも、嘘のないよう努めて書きました。

二案書いたので、雑誌に載ってない方をブログに載せます。
繊細な子どもの心理を的確にとらえた胸に迫る映画です。骨太なのに優しい映画。ぜひ岩波ホールまで足を運んでみてください。
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『冬の小鳥』

監督:ウニー・ルコント
韓国・フランス合作
配給:クレストインターナショナル

2009年カンヌ国際映画祭特別招待
2009年東京国際映画祭<アジアの風部門>最優秀アジア映画受賞
2010年アジア女性映画祭ネットワーク賞受賞

 冬の乾燥した空気が太陽にきらきらと照らされ、物語の進行とともに表情を変えていく。

 少ない言葉、限られた空間の中、登場人物の一挙一動に胸をわしずかみにされました。始終私の涙が止まらなかったわけ、それはきっとウニー・ルコント監督が、人間の悲しさ、悔しさ、優しさ、そして希望を描く方法を、映画監督である前に、一人の人間として十分に理解しているからではないでしょうか。

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韓仏合作の本作では、韓国映画の骨太さ、フランス映画の繊細さが絶妙にマッチし、被写体である子供たちの豊かな表情とその背景にある社会の複雑さを見事に映し出しています。この映画には嘘が一つもないように感じました。それは、実話をもとにしているからという次元の話ではありません。

空々しい幸福論を唱えることもなければ、観客を感傷に浸らせる演出もない。装飾的なものをそぎ落としたからこそ見えてくる子どもたちの生命力、その背景には、いつもルコント監督の温かい眼差しを感じることができます。的確な表現の連続が、フィクションの中に真実を生んでいるようでした。

子どもも大人も、誰しもが現実と折り合いをつけながら、今より少しでも幸せな方へと歩を進めていく。その中で夢を見、傷つき、後悔をし、また立ち上がる。この繰り返しが、未来への一歩へとつながっていくことを、幼い少女ジニ、そして彼女を取り巻く人々が教えてくれました。

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 ラストシーン、周りの意思に促され、最後には自分の決断で大きな一歩を踏み出したジニ。彼女の目線を通した世界は、不安に包まれながらも力強く、そして明るい光の中にあるようでした。