ベルリンPART2

ベルリン映画祭では毎年、タレントキャンパスという若い映画製作者のための国際サミットが開かれています。

山田監督や、『京都太秦物語』の阿部勉監督、そしてプロデューサーの山本さんも壇上でお話ししました。
会場はベルリンの中でもとても古い劇場の一つだとか。雰囲気のいい場所。
 photo by kotera
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このサミット一つをとっても、ベルリンでは本当にたくさんの人たちが映画の未来を真剣に考えているということが伝わってきます。
そんな中、学生たちが中心となって作った映画『京都太秦物語』は、大きな話題を呼びました。
映画が斜陽産業と呼ばれるようになってから、若い映画人を育てる場所が激減しているのはどの国でも同じこと。
そんな状況の中、映画を学ぶ学生たちが、尊敬する監督と一緒に作品を作り上げ、しかもそれが三大国際映画祭の一つ、ベルリンへ招待されたという事実は、多くの映画人にとって、一筋の希望の光に見えたのかもしれません。
レッドカーペットを歩く学生さんたち photo by kotera
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なんと、完成試写会(二日間)のチケットは完売!!
どの映画を買い付けようかと、世界中からシビアな目を持ってベルリンへきている映画関係者たちも、この試写会ばかりはビジネスを忘れて、映画を心から愛する一人として観にきてくれたように思います。
この映画の主人公は私と同じくらいの年齢、現代劇ということもあり、日本で観ていたときはついつい自分の生活の延長線上で映画を見ていました。
そうすると、細かいところばかりに目が行ってしまう。
「こんなこと今は言わないんじゃないか」とか。
けれど、字幕なんかがついて外国のお客さんと一緒だと、まるで外国の映画を観ているような気持ちになって、不思議と今まで見えていなかった美しい風景や、物語がすんなり入ってくるのです。
私たちがよく知らない外国の映画を観るときは、その国の細かいリアリティーなんて到底わからないのに大笑いしたり涙を流したりするけれど、それと同じことなのかな。
結局私たちが感動しているのは、その映画の作り手の根本にある人間観であり、世界観。細かいことはあとからついてくるものなのかも。
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ここからは私がベルリンを発ってからの話。
二日目の試写会が終わると、客席からの拍手がいっこうに鳴り止まず、Q&Aが始められないという事態に。
あまりにも盛り上がっているので、予定にはなかったけれど学生たち全員を舞台に上がらせたそうです。
学生の一言一言にさらなる大拍手、大歓声!
こんなに温かい試写会は見たことない、とスタッフは胸が熱くなったと言います。
私もその場にいたかったな。
『おとうと』は映画祭のクロージングフィルムだったので、こちらも上映は見られず。
そのころ私はヘルシンキの空港に。
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二つの映画の上映成功を、陰ながら祈っていました。